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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

あれから……

2016.7.26 Tue

7月26日が巡ってきた。あれから1年、不安と闘いながら夢中で過ごして、あッ!という間のような長かったような1年だった。
一昨年秋に思わぬ病気に倒れて、夫は一ヶ月近くの入院生活を余儀なくされた。
入院中は、ヨレヨレになりながらも北区で催された『浅見光彦倶楽部』のイベントに出席したりして、その後、何とか退院はしたものの年齢のこともあり、なんとなくすっきりしないままに年を越した。
冬が過ぎ、春が来て、月に一度程度の通院とリハビリの甲斐あって、軽井沢に戻って夏を迎えることができた。
8月の第一日曜日の、クラブハウスで恒例のサイン会が近づく。こんな状態でサイン会をどうしよう。この日を楽しみに九州から来て下さる会員さんもいらっしゃる。
でも以前、帯状疱疹を患ったとき、点滴のビンを腰にぶら下げて、その痛さに呻き、顔をしかめながらも敢行したサイン会を思い出す。痛ましそうに夫を見守って下さる会員さんたち。
そんな会員さんたちのためにも……という思いもあったが、現状では命取りにもなりかねないと、思い切ってサイン会を中止した。
中止したのなら、いざというときのためにかかりつけの病院のある東京に出ようと、7月24日に突然決心して、25日に上京した。そして……。
26日の夜、バスルームで洗濯物を干している私のところに、『孤道』を執筆しているはずの夫がやって来て「何だか左手に力が入らない……」とオロオロしている。
取り落とした眼鏡が掴みにくいという。
慌てて「アイウエオって言ってみて」というと、なんとなく滑舌が悪い。私はすぐ病院に電話をしてタクシーを走らせた。軽い脳梗塞だった。
しかしその後、血栓の飛んだ位置が悪かったせいで、療養生活が長引いている。脳梗塞といっても、百人百色らしい。夫のサポートをしながら、私はいろいろなことを勉強した。
脳梗塞という病気について家族のあり方、老々介護、在宅介護、そして国の政治の本音やこういう時の他人の心の優しさや冷たさ……etc.
夫は早く作品に取りかかりたいようだし軽井沢に帰りたがっているけど、まだ当分療養生活は続くだろう。
7月26日かァ! 心が痛い!

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