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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

大声

2020.11.14 Sat

私の溺愛犬だったキャリーが息を引きとった瞬間、私と夫は、その瞬間抱き合って号泣していた。そして私は夢の中でも泣いて、哀しみから立ち直るまで2年かかった。
そんな私を見て、「ぼくが死んだ時も、カミさんはあんなに泣いてくれるのかなァ……とおっしゃってました」と夫が言っていたと編集者からの報告があった。
「もちろん泣くわよ」と、そのあと笑いながら夫に言った。
そのあたりのことは『軽井沢でキャリーと』という拙著に書いてあったらしい。
あの頃は自分たちもいずれは死ぬのだということを、現実のこととして考えてなかったはずだ。
ティーサロン『軽井沢の芽衣』のサンルームで、私はスコーンとコーヒーの昼食を摂っていた。
その時入ってきた初老の男性が「コリー犬が亡くなったとき、立ち直るのに2年かかった……という本を読みました」と、夫が編集者に言った言葉に笑っていた。
それで「ほんとうに2年かかったのですよ。でも……、夫が亡くなって2年半も経つのに、まだ立ち直れないないのです。たぶん夫はあっちで(空を指さして)喜んでいるでしょうね」と笑ってしまった。
そのあと男性は店内にいるお連れの女性に「2年半かかってもまだ……」と報告する大きな声が丸聞こえ。ちょっと笑える。
トシを重ねると声が大きくなるんだな。耳が遠くなるせいかな。
深まる秋に……って〆れば美しいかな?

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