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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

2022.4.27 Wed

友人からその友人の話を聞いた。
差し迫って不要のまとまったお金があって、そのお金をウクライナに寄付することにしたのだそうだ。しかしウクライナへの寄付と称してお金を集めている悪い人がいるので、直接ウクライナ大使館に届けることにしたんだって。
そのとき乗ったタクシーの運転手さんにその話をすると、わずかだけど自分も寄付をしたいと申し出て、でも運転手さんが大使館に入るわけにはいかないので、 代わりに寄付をしてきて下さいって。
その友人は代理で寄付の署名するわけにはいかないからと断ると、ではタクシー代を寄付しますと代金を受け取ってくれなかったのだそうだ。
その話を聞いて、もちろん私は感激した。
どんなときでも人の善意を利用したり食い物にする悪いヤツがいるけど、世の中捨てたもんじゃない。
しかし何が心の貧しい人間にさせてしまうのだろうか。
以前見たテレビのドキュメントだったかの番組で、貧しい某国へのNGOの食料援助を報じる番組があった。その中に毎日並んでいる女性がいた。 それを取材 している記者がその女性に「あなたは働くことをしないのでか?」 と聞くと、その女性は言った。「どうして働くの? 働かなくてもこうして並んでいたら食べ物をもらえるのに……」。
食料援助のお金は天から降ってくるわけじゃない。心優しい人たちの『心』なのだ。それが例え100円200円であっても。
困っている人を助けるのは当たり前だけど、優しい心がいつか人の心を鈍化させてしまうことも確かにある。
これは多分フェイクだろうけど、ロシアに連れて行かれたウクライナの人が、収容所のようなところに入れられているという話を聞いた。中には『心』を持っている人もいるだろうが、上からの命令に鈍化している人の心に管理される、収容されている人は悲劇なんてものじゃない。
私はアウシュビッツなどの、強制収容所のようなものを連想してしまった。でも、まさか21世紀なのに……ね。少しでも人間の『心』があったら……、まさか!ね。

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