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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

ゆっくり!ゆっくり!

2018.6.4 Mon

夫を介護していた時は、ただひたすら私が病気にならないように、私が先に死ぬようなことがないようにと、健康のことばかりを思っていた。
コンビニ生活にならざるを得なくても栄養のバランスをしっかり考え、『野菜1日これ一本』に頼り、毎日毎日牛乳に粉末の青汁とコラーゲンを混ぜ飲んでいた。
毎日車椅子を押して散歩をするので、靴もローヒールに替えた。
料理のメニューも忘れてしまうそんな生活が3年半も続いて、夫は穏やかに逝ってしまった。ほんとうに穏やかだった。
介護と夫より先には死ねないということばかりに気をとられて、こだわっていた自分の体型維持をすっかり忘れていた。30年前のタイトスカートがまだ履けるとあんなに自慢していたのに、気がつくとウエストや腰回りがすっかりダブついていた。そして運動神経は割と自信があったのに、走ろうと思っただけで足がもつれてしまうような錯覚にさえなっていた。
多分に「トシ取って骨折をしたら、生涯寝たきりになるよ」と聞いたのが効いているのかもしれない。
実年齢より若くは見られているけれど、ほんとうに私はもうトシなのだ。あとどのくらいの時間が私に残されているのか分からないから、その時間を自分のために使おうと決めた。余計なことに気を遣うのもやめよう。
髪振り乱していた(私はベリーショートなので、振り乱せない!)時間を取り戻さなくては……。
でも急がないことだ。急ぐとろくなことはない。
横断歩道の信号の青が点滅をしたら、一回待つ。シニアの急いで走る姿は美しくないし、転びでもしたら恥ずかしいどころではない。せっかくの自分の時間が寝たきりでは、夫を懸命に介護した時間の意味がなくなる。
まだまだ夫亡きあとの法的事務処理は終わってないけど、焦らない。ゆっくり!ゆっくり!自分の時間を楽しむぞ!

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