内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
ボケ
2019.5.26 Sun
買い物の途中、白い花が枝々を覆うようにして咲いていた。
アレッ? あの花、何て名前だっけと、頭をフル回転させていた。
軽井沢をちょっと留守にするとこれなんだからと、でも名前を思い出そうと一所懸命だった。
花の名前だけではなく、年を重ねてからこっち、人の名前や地名などが嫌になるほど出てこなくなった。
日本の白地図だって、以前は100点をとったはずなのに、いまは70点くらい? そして人の名前だって、顔つきやエピソードなどは浮かんでいるのに、肝心の名前が出てこない。嫌になっちゃうなアと思いながら、花の名前、何だっけ何だっけと、思い出した。『やまぼうし』。そうよ『やまぼうし』よと、頭の中で何度も「やまぼうし、やまぼうし」と繰り返しながらスーパーに着いた。
『ふきのとう』があった。そういえば夫が元気でキャリーも元気だったころ、庭先のふきのとうを摘んで蕗味噌をつくったなアと、うっとりしていた。
ふと気がつくと、頭の中で「ふきのとう、ふきのとう」と繰り返していた。
やっぱり私、ボケが来てるみたい。