内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
ごめんなさい!
2016.5.29 Sun
WOWOWの番組表6月号が届いた。
パラパラめくっていたら、何と! 5日にイル・ディーヴォのライブの模様を放送するではないか。ワオ!ワオ!と、胸が高鳴ってしまった。
その時間にテレビを見ることが出来たら、『私のデイヴィッド』を見られるのだ。うれしいな!うれしいな!と思ったがハッ!とした。
デイヴィッドには永遠に無理なことだけど、ある友人に今まで謝りそびれていたことがあったのだ。
それは何年か前のことだ。
友人もデイヴィッドの大ファンで、私とは『恋敵』としてデイヴィッドの歌がどんなにハートを熱くするかと、バカなことを言ってしあわせに漂っていた。
私たち夫婦がワールドクルーズに出かける時に、その恋敵がイル・ディーヴォのマグカップをプレゼントしてくれた。敵に塩を送るなんて、何という余裕。
横浜を出航したその夜、洗面所でふと見ると、ななな何と! そのマグカップのポリデントで青く染まった水の底に、夫の部分入れ歯が沈んでいるではないか。ギャーッと私は叫んだ。「いくらデイヴィッドに嫉妬しても、これではあんまりじゃない!」
それ以来私はそのマグカップの所有権を放棄した。
せっかくプレゼントしてくれた恋敵には、そのことは言えずに今日に至っている。
いま言います、ごめんなさい!
でもデイヴィッドも、自分たちの写真のマグカップが、そんな使われ方をしているとは……、知っているわけないか。