内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
南極探検再び
2017.12.31 Sun
この冬は思いがけない寒さで、11月末には夫の南極探検が開始された。
装備の順番としては、車椅子に座っている夫にまずレッグウォーマー→膝掛け→ダウンコート(ダウンコートを来てから車椅子に座ると、少しずつ滑り落ちて危険だから、後ろ前に着せる)。
夫は左半身が不自由だからダウンコートの左袖に右手を通して、からだをすっぽりと包み、本来の右袖は背中にまわして背もたれから上のからだを包む。
そしてサングラスをして耳を包む帽子をかぶせる。
左手はコートに包まれているので、右手に手袋をして、風が冷たいときはタオルで鼻とあごを隠して「怪しいヤツめ!」で、いざ出陣!
抵抗力や免疫力が落ちている今、風邪をひかせるわけにはいかないから、見た目などを気にしている場合ではない。そして外気に触れさせたり外界との接触を心がけてあげないと、感性が落ちていくのが怖いし……。
ほんとうに怪しげなヤツだけど、会話は穏やかだし冬ざれの芝庭のサザンカにはこころ和むし、この寒空に飛ぶ飛行機に「早く旅行したいね」としんみりとしたりして短歌の題材を探したりしている。
毎日の行動半径は狭いけれど、夫婦の穏やかな南極探検隊だ。