内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
味覚
2019.1.31 Thu
甘いものを食べたときに飲む日本茶の味は最高だ。ため息をつきたくなるほど気持ちが落ち着く。日本茶はケーキにも合う。わかっているけど、私は紅茶党だ。美味しい紅茶を飲むときは、ほんとうに幸せな気持ちになれる。
我が家の朝はパン食だし、私の前世がイギリス人だったせいで紅茶だ。
それもロンドンのFORTNUM & MASONから取り寄せるほどこだわっている。
私は前世イギリス人を吹聴しているくせに、英語はまったくできない。なぜって、現世では日本に生まれてしまったから……というのはいい訳で、授業中は居眠りしたり、空想&妄想の世界に漂っていたせいだ。だから注文するときは、いつも姪の語学力に頼っている。
それほどこだわっている紅茶なのに、その日によってまったく味が違う。美味しーいッ!と目がハートマークになったり、エエーッ?と目が三角になったりと。
紅茶のメーカーも品種も水も茶葉の量も、いつも同じように淹れているのに。
日本茶にしても紅茶にしてもコーヒーにしても、点て方が繊細なのは知っている。
しかし、飲むときの気分やからだの調子によって味が違ってくるのだなァと、味覚の不思議さを、今朝はしみじみと感じた。このところ美味しさを感じなかったし、今朝はとくに美味しくなかったのだ。
朝は味噌汁が希望だった夫は、毎朝の押しつけ紅茶がどんな味だったのだろうと、今朝ふと感じた。ふと感じたついでに「ごめんね」と謝り、そしていい訳をした。「私はお味噌汁を飲むと胸焼けをする質だったけど、お夕飯には必ずお味噌汁は作っていたでしょ」。
そうしたら幻聴があった。「おかげで味噌汁を飲めるようになったじゃないか」と。