内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
語彙
2021.10.31 Sun
『内田康夫』が逝って、もう3年半が過ぎた。
初めの2年近く私は喪失感でただボケーッと過ごしていたが、それ以降は夫が遺してくれた著作を、ひたすら読み返していた。
それまでもこの作家の語彙の豊富さに舌を巻いていたが、その言葉の意味を前後の文章で理解しただけで、目で追った後はもう記憶から消えていた。
しかしいま読み返している作品のあちこちに散らばっている漢字や熟語に、なぜあの時に調べなかったのかと、自分のいい加減さが情けなくなっている。
それに、女性には敬遠されがちな社会問題をミステリー仕立てにして、分かりやすく教え、それも一方に偏らずに、こんな考え方もあるけどこんなもあるのだと、浅見光彦を通して私に教えてくれたような気がする。
いま私は『不知火海』(新潮社文庫)を読み返している。
この親本は講談社から出された。その時も読んだはずなのに、今また新しい語彙に気が付いて頭がガーン!
他のページにもあったけれど読み飛ばしていた。これではいけない……と気が付いてべッドから抜け出し(私の読書タイムは、就寝前のベッドの中)、電子辞書で調べることにした。
例えばP141の「方途」=進むべき道……だそうだ。
P157の「使嗾」=指図してそそのかすこと……だそうで、あくまでも私だけかもしれないけれど、よくもこんな言葉を知っているなと感心しきりだ。
因みに「しそう」とよむ漢字は28種類もあった。びっくり!って、自分の無知をバラすようで恥ずかしいけど「聞くは一時の恥云々」というから。
もっとも官僚が書いた原稿の「云々」を「でんでん」と読んだ総理大臣が、どこかの國にいたっけ。それからすると「使嗾」の意味が分からなかったくらい、まだカワイイ」かも?
辞書で調べてベッドに入っても眠れなくて、ふと気が付いたら4時半になっていた。バカみたいだけど、明日になって「あれっ? 何を調べようとしていたんだっけ?」になるより、まアいいや。