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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

月に終わる(吠える)

2022.3.27 Sun

朝、マンションの東側のカーテンを引くと、遠くのビルの谷間から顔を出した太陽がまぶしく輝いていた。そして北側のカーテンを引くと、西の空にまだ白い月が浮いていた。
何ヶ月後の未明、目が覚めて眠れないまま東側の空を見ると、雲隠れに上弦の月が白く輝いていて「ん?」。まもなく夜が明けるのに、お前はそんなところで何をグズグズしてるの?
太陽の周りを地球が回り、その地球の周りを月が回る。太陽の大きさと地球の大きさが違うから……と、その理屈は分かるけど、でも不思議な情景だった。
それはそれとして、静まりかえった軽井沢の夜。窓から見る森の中で、木の葉隠れの白い月。雪の上に木々の影が長く伸びていて静寂。それは鳥肌が立つような幽玄の世界だった。
夜中に足音を忍ばせて歩く雪の上のキツネの足跡。どこからかキツネの遠吠えが聞こえていたのはもう昔の話だ。
あの頃は夜鷹が笛を吹いているような声で鳴きながら、我が家の周りを徘徊していたっけ。
太陽も地球も月も変わらず動いていて、軽井沢の幽玄の世界はそのままだけど、地球は温暖化が進んで壊れかけている。
キツネがめっきりと減り、夜鷹の徘徊は絶滅した。そのうち私の徘徊が始まるのがオチだ。
寂しい……と、白い月を見上げながらしみじみと「終わる……か」と思っていた。

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