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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

難問

2017.7.9 Sun

夫が脳梗塞で倒れてからそろそろ2年近くが経つ。改善されたり足踏みしたりと、その度に私は一喜一憂。その間、友人や編集者の方々には、精神的な支えを(お弁当の差し入れも)頂いたりして、どんなにか私は助かっていたことか。
今でも私自身が倒れてはいけないと、風邪をひかないように病気にならないようにと気を遣い、栄養のバランスにも気をつけ、人間ドックで病気の早期発見に努める日々だ。
ノー天気な事を言ったり笑わせているけれど、たぶん私のストレスは半端ではないと思う。
先日お亡くなりになった小林麻央さんはすごい立派な女性で、あのブログには泣かされた。
『強い女性だ』と書かれたツイートに、私は、強いかもしれないけど、人には分からないところで、絶対泣いていた筈だと心を傷めた。
それで……。
私だって同じ事を言うと思うし、いや! 絶対言っているが、お見舞いのご挨拶に対する返事に、ちょっと困ったかな?
誰だってお会いしたりしたときには「いかがですか?」と挨拶をする。それは当たり前のことだ。100%善意だ。私だって同じことを聞いていた。それは善意から出る挨拶だ。
でも……、聞く方は一度でも、答える方はその都度辛い思いをしながら答えているということに、気がついた。
これが盲腸の手術とか、経過のはっきりしている病気ならいいのだけれど、例えばガンとか脳梗塞などのような、先が見えない病気の場合は返事をする度に傷つくこともあるだろう。言えないことだってあるだろう。
身内だったら電話で問い合わせたりするのは当たり前だけれど、そうでない人から電話で問い合わせてくるのは、ちょっと辛い。
善意で心配してくれているのは分かるけれど、私が疲れているときに30分近くもあれやこれや聞かれて「大変ねェ、お大事にね」のときは、私の態度はかなり悪くなるはずだ。
心配だからお見舞いの言葉をかける……、でも答える方は、その都度辛い事実を何度も答えなければならない。ではどうしたらいいのだろう。知らんふりをするわけにもいかないし……。
私だって「いかがですか?」と、絶対に聞く。聞かないほうがおかしい。
どうしたらいいのだろう。答えが出ない。
こんな時、軽く「ボチボチですわ」と、大阪弁はいいなと思う。『ボチボチ』という言葉は、いい方にも悪いほうにも受け取れるし(違うかな?)、軽く受け流せるような気がするし。
自分だって同じことをするくせに、自分の時は「辛い」と言うのは勝手すぎるかも。
つらつら考えているけれど、これは答えの出ない難問だ。

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