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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

恐怖

2017.2.8 Wed

所用で新宿方面に行き、帰りに新宿から池袋行きの地下鉄丸の内線に乗った。
私は東京の地下鉄といえば、丸ノ内線と銀座線しか知らない。
そのむかし、地下鉄は乗った距離に関係無く一律25円だった。もちろん改札口には駅員さんがいて、切符にハサミを入れる。しかし一律料金だから、改札出口には駅員さんはおらず、そこには大きなかごのようなものが置いてあった。
出るときはそのかごのようなものに、切符を放り込んでおけばいい。
あれから時代は幾時代も過ぎて、何とか線・何とか線と、東京の地下深くに鉄道網ははりめぐらされている。
そんな話はさておき、とにかく私は新宿から電車に乗った。次は新宿三丁目駅でドアは進行方向右側が開く。私が下りる駅は左側のドアが開く。だから電車の左側の出口近くのつり革にぶらさがっていた。……三丁目を発車して間もなく、何となく私はドアの上にあるデジタルで表示される次の駅名を見た。
『次は新中野』となっていた。私は一瞬混乱した。エッ? 私は確かに新宿で池袋行きに乗った筈だ。もう一度次の停車駅を見た。行き先は池袋で間違いないのに、次の停車駅は『新中野』と表示されている。次は新宿御苑前のはずなのだ。私は新宿で反対方向に乗ってしまった?
いや、階段を下りて、確かにホーム左側の電車に乗った。混乱してしまった。アルツハイマーの認知症を発症? 夫をどうしよう! 心細そうな夫の顔が浮かんできた。
どうしよう、どうしよう……とうろたえながら次の駅に着いた。『新宿御苑前』だった。
いつもなら次の到着駅を車内アナウンスされるはずなのに、夢想空想に耽っていた私が聞いてなかったのか……。いやデジタル表示が故障で、たぶん放送してなかったのだと思う。
恐怖だった。マジ(この言葉、大嫌い)、怖かった。時々「あ、老化現象?」と思い当たることがあるだけに、ほんとうに怖かった。

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