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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

一期一会

2017.8.4 Fri

軽井沢のスーパーマーケット『ツルヤ』のブランド品で、信州産ふじりんごの酢を使用した『食べるやわらかにぼし』というカルシウムのかたまりのような食べ物がある。
私はこのところ、それにハマっている。
瀬戸内海産の片口イワシだそうで、干されてリンゴ酢で煮られた一匹が4センチ前後のものだ。
地球の70%が海で、その海に何匹……いや何億匹(それ以上)の片口イワシがいるのか分からないけれど、そのうちの何匹……いや何千万匹(それ以上)の片口イワシが瀬戸内海に住んでいて、そのうちの何匹……いや何十万匹(それ以上)を瀬戸内の漁師さんが捕った。
そして干されて小さくなった片口イワシが長野県につれてこられて、信州産のふじりんごで煮られて、袋詰めされて店に並び、私が買ってきた。
そしてトシがトシだから骨粗鬆症にならないように、でもカルシウムの摂りすぎにならないように、一日に10匹くらいずつ食べている。
1匹ずつ口に入れながら「数えきれない匹なのに、選ばれて(選んだわけじゃない。偶然だ)こうして私の骨になるために食べられている片口イワシ。これも一期一会だね」と、でも私の口に勝手に入れられる片口イワシはどう思っているのだろう。どうせなら有名人の口に入りたかったと思っているかも……と想像しながらポリポリ。
美味しい!
今回軽井沢に帰ってきて、「数え切れない匹の中の数百匹! 一期一会、一期一会」と、また買ってしまった。
片口イワシって、英語ではJapanese anchovyって言うそうだ。Japaneseというくらいだから、外国の人は食べないのかな? 美味しくてからだにいいのに。

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