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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

そして11月

2024.11.13 Wed

今年の夏は異常な暑さだった。日本での最高気温が40℃を超え、9月が終わりに近づいても35℃越えの県があっただなんて信じられない……と言っても、それは現実そうだったのだから。
そして冬の南極で氷が溶けているとニュースで知った。地球はやはり壊れてきているようだと実感した。
東京の7月のあの日、買い物に行く途中、あまりの暑さに呼吸が苦しくなり心臓が痛くなったりした。まもなく冷房の効いた店に着いてその両方とも治まったけれど、年齢も年齢だから歩きながらここでぶっ倒れたらどうしようと、本当に怖かった。
軽井沢も例年より暑かったにもかかわらず、まだ八月の中旬だというのに、我が家の庭の気の早いナナカマドの一部の枝が色褪せ始めていた。そして九月には山栗がはじけて我が家の前の道路にゴロゴロ。もちろん拾って皮をむき、さっと茹でて冷凍した。栗ご飯が楽しみだ。
そして早くも白樺の葉が縮れて散り始めていた。木の葉隠れでチラチラとしか見えなかった近所の別荘がしっかりと姿を現し、ススキの穂が揺れていた。彼岸花も咲いていた。
彼岸花といえば夫の介護の帰り道、川べりに彼岸花が咲いていて、胸が痛くなったことがあった。そのとき浮かんだ一句。『川のへり誰を待つのか彼岸花』。川ってもちろん三途の川のことだけど、その半年後に夫は川を渡ってしまった。
例年より気温の高い日が続いていても、高原の季節は順調に進んでいるのだった。
森を歩いていると風と風のすき間に小さな小さな秋の気配が漂っていて、思わず ♪誰かさんが誰かさんが……小さい秋みつけた♪と口ずさんでいた(サトウハチロウって、その風貌から想像も出来ない可愛い詩をつくるのだなとホッコリ)。そして♪静かな静かな 里の秋♪だの、♪秋の夕日に照る山もみじ♪だのと、療養中の夫の車椅子を押しながら、よく唄った歌だったと思い出してちょっとウルウル。
あれから7回めの11月。そのうち森の中の木という木の葉が散り、落ち葉掻きに悲鳴を上げ、広くなった空に感激する11月。
11月はまず私の誕生日があり、一週間後に夫の誕生日があり、その翌日が結婚記念日だというプライベートだけど忙しい月だった……と、いまは過去形だ。
○○歳! こんな高齢になるつもりはなかったのに、いつの間にか○○歳になっていた11月。
夫はいいなァ! もうトシはとらないのだもの。これからは私だけがトシを重ねていく11月。切ないなァ!