ブログ

HOME > 早坂真紀つれづれ

内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

ボケと老化

2025.1.13 Mon

ただの老化のせいなのか、ボケが始まっているのか、情けないほど固有名詞が出てこなくなった。「あれ、あれ……」と、思い出せない固有名詞のまわりをグルグルと、気持ちだけだ焦っているだけでラチがあかない。仕方なく辞書を引いて「なんだ! そうか!」と辞書を閉じた途端、また「アレッ? 何だっけ」なんて情けないことこの上ない。
親しい人の名前も出て来なくなった。顔や先日会ったときの会話や服装などを思い出しても、肝心の名前が出て来ない。そのくせしばらくして、脈絡もなく「アッ!○○さんだ」なんて、遅いよ!
先日のボケなんて、まったく情けなくて笑ってしまう。夜中にふと目が覚めて「アレッ? あの人、どこに住んでいるんだっけ?」。
朝になってからだっていいことなのに、どうだっていいことなのに妙に気になって、起きだして電気をつけ住所録を出したつもりが金銭出納帳だったなんて、涙なくして笑えない話(?)だ。やっぱりボケが始まったのかも。
このまま本当にボケてしまったらどうしようと思うけれど、「いいや!」と開き直ることにした。ボケてしまったら、自分がボケたことも気がつかないだろう。ボケたということの自覚があるうちは、まだ完全にはボケてない証拠なのかもしれないし……と。
そしてここ近年の自分の顔の何と酷いこと。シワ、シミ、たるみ。特にたるみは頬だけでなく、筋肉がゆるんだまぶたが目に被さり、前が見えないほどだ……って、それは自虐が過ぎる? 
子どものころ「なんて目の大きな子なの?」と言われていたのだと、母が言っていた。そして『テンプルちゃん』と称ばれていのだそうだ。シャーリー・テンプルという子役の名前が由来らしい。でもそれも今は遠い遠いむかしのこと。
もともと私は自分の顔が嫌いで、地下鉄などの窓に映る自分の顔から目を背けるほどだったが、近年はとくに嫌いになっていた。
以前姪に「トシとともに目が悪くなるのは、なぜだか知ってる?」と聞かれたことがあった。答えは年齢を重ねるほどに汚くなる自分の顔に気がつかないようにするため、だそうだ。
一昨年に私は白内障の手術をした。手術後して視力がアップしたことはいいのだが、後悔は一つ。それ以来鏡を見るたびに老いをしっかりと認めざるを得なくなったことだ。「あれ! 私って、こんなに汚かったの?」って、白内障の手術をした人の、共通の思いらしい。
だから必要なとき以外、私鏡を見ない。姪が言ったことはやはり正しかったのだ。
それにしても、ホテルの洗面所などにある凸レンズの鏡(凹レンズ?)。うっかりあの鏡に映る自分の顔を見たときの仰天ったらない。同じ思いをしている年長さんも多々?
しかしそれはさておき、新しい年が始まったことだし、ボケと老いと仲良くしながら生きていくことにしよう。

 »

2024.12.13 Fri 来年からは……