内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

思います

2019.8.16 Fri

以前、喫茶店やレストランで飲み物などを注文したものが運ばれてきて、「こちらコーヒーになります」だの「熱いおしぼりになります」と言ったと、ずいぶん話題になったことがあった。注文されたコーヒーを運んできて「こちらコーヒーになります」はないだろう。待っていたらコーヒーになるのかな？　これはまだコーヒーではないのか……と。
でもそれは今では誰も話題にしないし、テレビのアナウンサーやレポーターたちの、言葉を職業にしている人たちまでが当たり前のように使っている。
たとえば誰かの家を紹介するときに、そのお宅の前で「こちらが○○さんのお宅になります」だって。
事件現場で「ここがその現場になります」だって。
そして小煩いことを言うようだけど、気になって仕方ないのが「思います」。
「オリンピックでメダルを取れるよう、頑張りたいと思います」「努力したいと思います」, etc.　……で、その度に私は「何だ！　頑張るのではなく、頑張りたいと思っているだけか」なんてチャチャをいれてしまう。
いつかは歩道に突っ込んできた車で亡くなった子供のご両親に「お悔やみを申し上げたいと思います」って、元大臣が言っていた。
そして不祥事のあった会社の偉い人が「お詫びを申し上げたいと思います」。
「二度とこのようなことのないように、身をひきしめたいと思います」。
先日の国際会議の閉会宣言では「これで国際会議を閉会したいと思います」と、一番偉い人が言っていた。みんな思っているだけなんだなァ！
何だか心がこもってないな……、せめて私は「思います」といわないように気をつけたいと思います。もし言ってしまったら注意をしてくださるようお願いしたいと思います。