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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

バカなヤツ

2020.7.16 Thu

軽井沢の森はすっかり緑が濃くなって、息苦しいほどだ。
しかし私は食事のときも、パソコンのキイを叩くときも、テレビを見ているときも、窓の外の緑が気になってしかたない。息苦しいけど窒息死する心配もないので、緑が濃くなる速度の違う木々をチェックしている。
かなりバカだと思うけど、そのおかげで我が家の庭に野生の藤の花があることに気が付いたし、ベランダに突き出ている枝に、昆虫のタマゴがあることにも気が付いた。
そう言えば以前、台所の窓近くの木の枝にも昆虫のタマゴを見つけた。どんな昆虫が顔を出すのか楽しみにしていたら、シジュウカラがやって来てはタマゴをついばんでいた。その昆虫には悪いけど、私は大笑いをしてしまった。私だってウズラやニワトリ、サケやタラのタマゴを食べてるもんな……なんて。
バシンッ!と音がした。何と! 鳥が窓に激突したのだった。緑の木々が写っている透明なガラスに、たぶん通り抜け出来ると思ったのだろう。バカなヤツだと大笑い。
よく見ると激突したあとに、羽毛がくっついている。かなりのスピードで飛んでいたに違いない。もしかしたら脳震とうで、庭に落ちてないかと目で探したけれど、それはなかったみたい。
そう言えば以前、夫が大笑いしていた。やはりベランダのドアガラスに激突した鳥がベランダに落ちて、脳震とうを起こしたらしくつかの間キョトンとしていたそうだ。そして「ここはどこ? 私はだれ?」状態で、ふと自分が鳥だったことを思い出したらしく、どっかに飛んでいちゃった。「バカなヤツだ」……と。
(私たちの「バカなヤツだ」は別にバカにしているわけではありません。可愛いヤツだなァ!という意味ですから、誤解のないように)。
そう言えば以前、我が家のガラスに激突して昇天してしまった鳥もいた。アカゲラ、ツグミ……。
緑がきれいきれいと森の中の住まいを自慢しているけれど、人間って勝手な生き物だなァと反省! でも森の中の住まいはいいとほざく私は、やはり人間社会より、森の中で二人で住むのが好き。

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