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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

自然百景

2020.9.11 Fri

今まで何度も書いていたと思うけれど、私はNHKの『自然百景』や『ダーウインが来た』、『ワイルドライフ』という系統の番組が好きだ。
撮影に時間とお金のかかるこんな番組は、やはりNHKでないと無理なのかもしれない。NHKだからこその番組だと思う。
最近見た『自然百景』。
手つかずの森は人跡未踏で、清らかな流れにはアメマスの稚魚が泳ぎ、名も無い草花が咲いていた。(撮影のために人が入ったのだから、もう人跡未踏ではない?)生命が自然のままに生まれて終わって、人間の力で破壊することはできても、作ることのできない『自然』がそこにはあった。
鬱蒼と茂る森には何千種類もの苔があった。老いて倒れた木の空間に太陽の光りが届いて、そこから芽吹く新しい生命があった。
朽ちた倒木をキノコが分解しながら土に返していくなんて、自然はなんと素敵なんだと言いながら、元はたぶん人跡未踏だったであろう森に私は住んでいる。
この森に我が家が住み始めた頃は、夜になるとキツネの遠吠えが聞こえ、夜鷹が鳴きながら我が家の周りを歩いていた。キャリーをからかいにくるキツネ。餌をねだりにくる小鳥やリスたち。
そのキツネやリスが姿を消し、森の番人(番鳥?)と言われるアカゲラも、ほとんど姿を消した。
40年ほど前は、この森にはポツンポツンと数件の家しか建ってなかった。それが今では『軽井沢の田園調布』と、誰が言っているのか知らないけれどそんな感じだ。
ティーサロン『軽井沢の芽衣』のある通りには、ほとんど芽衣しか建物がなかったのに、今はかなりの家が建つ。軽井沢の人口だって私たちが来た頃は1万5千人を切っていたのに、今は2万人を超す勢いらしい。
自然を愛して軽井沢に越してきた私たちが悪かったのかなァと、芽衣の裏に『妖精の棲む森』と称して、規模は小さいけれど、人跡未踏の雰囲気の森を残している。私の目の黒いうちは絶対に手を入れない……と、私の遺言の一つだ。
とは言え、元はと言えば江戸城も東京ドームも、地球全体が人跡未踏だったのだ。
自然の中で一番悪いのは人間が生まれたってこと?

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2020.9.7 Mon カマキリ