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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

短い未来に

2022.2.27 Sun

防犯カメラをチェックしたら、雪の庭をキツネが歩いていた。カモシカも歩いていた。ウザギがキャリーの『永遠の寝室』の上をピヨンピヨンと横切っていた。
わお! ファンタスティック!!
しかし今年はなんと雪が多いのだろう。積もってからの雪かきは大変だからと、積もる前に何度も掻いて、翌朝はまた積もっているのだから。
しかしふと気がついたら、雪かきは7年ぶりだった。たぶん明日は筋肉痛だ。
地球は温暖化しているんじゃないの? 「それなのにこの雪はなんじゃァ!」と文句を言いながら雪かきをしていて、またふと思い出してしまった。
フーフー言いながら玄関に続くガレージ前の雪を処理し終わったころを見計らうように、玄関から夫が顔を出して「終わったの?」「うん、終わった」「じゃ、ぼく、ちょっと碁会所に行ってくる」。そして私は「ムカッ!」。
あれから8年が過ぎたのか……。
テレビを見ていたら防犯カメラの受像機がパッと明るくなった。夕べ出しておい た鶏肉をキツネが食べるところが映し出されていた。
わお! ファンタスティック!!
あのころ出窓の下に餌を出して電気を消して、二人して窓とカーテンの間で息を 潜めて待っていると、抜き足差し足でキツネがやってきて餌を食べていたっけ。
「明日も餌を出しておいてね」「私にばかりさせないで、たまには自分で出して よ」「自分が出した餌をキツネが食べに来る、その幸せを譲っているのが分から ないのかな?」。そして私は「ムカッ!」。
イカン!イカン! 私はまた過去を振り返っている。
もう私には未来よりも限りなく過去のほうが長いのだ。だけどその短い未来が 「しあわせだった過去を振り返って幸せになれる時間」であっても、それもしあ わせ……だなんて訳の分からないことを思う雪の夜もしあわせ……って、ん? 何の こっちゃ?

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