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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

ウクライナ

2022.3.2 Wed

何回目だったか忘れたけど(調べればわかるけど、旅の記録の整理が悪く、探すのが面倒くさい)、ワールドクルーズでウクライナのオデッサに寄航したことがある。
オデッサといえば、映画『戦艦ポチョムキン』のあの階段が見られると、あのとき私はワクワクしていた。しかし寄港する客船のために港を広げたとかで、階段を何段か削ったのだそうだ。
でも港から階段を見上げながら、あそこから乳母車がコトンコトンと落ちて来たのだと、映画のシーンを思い浮かべていたっけ。
いまロシアがウクライナに侵攻している。オデッサは黒海に面した港だし、キエフから遠いから安全なのかなと思ったが、でもクリミアの近くじゃないか。
大丈夫だったかな?
あの港のそばにあった文学館。あの文学館に訪れた作家がサインするノートに、日本人で初めての作家として、夫が名前を残したことも思い出した。
記憶では文学館の前にあったウクライナの文豪ニコライ・ゴーゴリ(名前は知っていたけど、作品に関しては私の不勉強!)の銅像の前で、同じポーズして写真を撮ったのではなかったっけ。
そして船のバースタッフとして働いていたウクライナ人のオルガさんを思い出した。彼女はどうしているだろう。学費を稼ぐために、日本の客船にいわゆる出稼ぎをしていたのだった。キエフの大学に行くためとか、キエフに住んでいるとか、風の便りで聞いたのだけど……。大柄で色白で目が青く、典型的な東欧の女性だった。
私の夫が作家だと知って「英語訳の作品はありますか?」と聞いてきたので『戸隠伝説……』をプレゼントした。その後「生まれてきて今までもらったプレゼントの中で、一番うれしかった」と、お礼状をもらったのだ。私は国際親善をしたのだった。
思い出したことがまだあった。
オデッサに寄航した日の夜のイベントはローカルショーで、地元のタレントたちによる歌や民族の踊りだった。
ショーの最後に出演者一同で『我がウクライナ』だったかを合唱した。歌っている人たちの中には涙ぐんでいる人もいた。
不勉強でウクライナがこれまで歩んできた歴史を、詳しくは知らなかったが(よその国だ……という意識があったのかも)、胸を張って♪ウクライナ♪と誇らしげに歌うその人たちに、夫と私は感動していたものだ。歌詞の意味は分からなかったが国を誇りに思う気持ちと意味は通じていた。
ロシアの侵攻で、思い出の底に眠っていたあれこれが目を覚ました。
内戦も論外だけど、それにしてもこの二十一世紀に戦争だなんて……。ロシア国内を初めとして、欧米のあちこちで「戦争反対!」のデモのニュースを見た。渋谷でのシュプレヒコールの映像も見た。
話は違うけれど某大学の理事長の隠しもっていたお金……。お金って、どれだけあれば「もうこのくらいでいいや!」と、思うのだろうかとあのとき思った。お金って、人間をしあわせにもするけれど卑しくもさせるな……と。
国土もどれだけの広さがあれば、「もうこれ以上広げなくてもいいや!」と思うのだろうかとふと思った。人間はどれだけの権力を握れば満足するのだろう。権力を握れば握るほど「もっと! もっと!」と神経が麻痺してくるのかな?
『おんぶにだっこ』の次を知って居ますか? 『肩車』だそうで、その続きもあるのです。それはちょっと書けない!

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