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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

2019.2.7 Thu

つまらないギャグは脳の前頭葉がオヤジ化しているから……というのは、『チコちゃんに叱られる!』の受け売りだけど、私の脳はオヤジ化からひたすらDeathbedに向かっているらしい。
この1週間ほどはずっと引きこもりで、出不精がデブ症に追い打ちをかけている。
対面での会話といえば、セブンイレブンに2度ほど買い物に出た時の、「ポイントを使ってください」や「ありがとう」くらいかもしれない。あとは電話で事務局スタッフと妹と話すくらいかな?
BSテレビで北極圏をまわるクルーズを放送していた。私たち夫婦が2011年に行ったコースだ。
夫の遺影をテレビの前に連れてきて、二人で懐かしんだ。
ノールウェイのベルゲンでは、港の魚市場が映っていた。あの時日本人をみて「ターマちゃん! ターマちゃん!」と呼びかけられてびっくりしたこと。多摩川のアザラシが、こんなところにまで知られていることに驚き二人で大笑いしてしまった。
ブリッゲンの街並みが映ったとき、「ここを腕を組んで歩いたわね。まだニシンのウロコが残っているみたいな、1700年当時の木造の博物館、あれ? 何だっけ? この施設。北海やバルト海沿岸のニシンを……」と、その名前が出てこない。
何だっけ? 何だっけ? と、目はテレビの画面を追っているけど、頭の中は「何だっけ?」がグルグル。
バスでノールカップに向かい、ノールカップホールで写真を撮ったり、日本の自分宛にハガキを出した思い出話の時は夫とペチャクチャ、結果は独り言だけど。
アレッ? 『ここから北極圏』の標識を見たのは2014クルーズのときだっけ? と、記憶力の衰えにがっくりして、ベルゲンのことを思い出して、まだ、あれは何だっけ?
「高校の世界史で習ったじゃん」と言っても夫は黙んまり。
ネットで「北欧のニシン漁」などと調べても、ニシンの魚影や北海道のニシン漁のことしか分からず、ずっとイライラ。カタカナ3文字だったということを思い出し、『ギルド』。しかしこれは商人の組合か何かだよ!
もういいや! と、でも欲求不満で、夜になって思い切って毎日新聞のNさんに電話をしてしまった。
Nさんが「ハ」と言った瞬間に思い出して、「ハンザ同盟!」。私のほうが1文字遅れたが、ほぼ同時だった。
半日以上の時間を費やして『ハンザ同盟』だなんて、明日からの私の暮らしとどんな関係があるの?
でもすっきりして、やっぱり息をしている人間との接触は大切だと思った。
これからは買い物に行って「ポイントを使ってください」や「ありがとう」以外にも、何かおしゃべりをしよう。いやいや、それではオバチャンになってしまう。
脳の衰えと闘うって、大変なことだなァ。

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