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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

秘密の花園

2017.6.10 Sat

マンションの近くで建築中のビルが完成に近づき、ビルを囲むようにして植栽が始まった。根っこをコモで包んだ木が何本も転がっている。クレーンで順番に植えているのだけれど、順番が回ってくるまで強い日差しにさらされていた。私はせめて根っこに水をかけてやればいいのにと思っていたが、夕方近くに植え終わったようだ、そして夜に近い夕方、ゲリラのように雨が降り出した。傘を持たない人が大慌てに走っている人をテレビが映している。傘をさしている人も、足もとがびしょ濡れなのだとか。
そんな人には申し訳ないのだけれど、私は「葉っぱちゃん!よかったね」なんて、子どもみたいなことを思っていた。多分葉っぱたちは大きく息を吸い込んでいることだろう……と。
久しぶりにこんな子供じみたことを思ったのは、一昨日から一気に読んだ『小公女』と『秘密の花園』の せいだ。
先日、何気なく立ち寄った近所の書店で(いや!『孤道』の売れ行きを偵察するために)、偶然見かけた文庫版の『小公女』と『秘密の花園』を見つけて買ってきた。もともと私の愛読書だった。そして何十年ぶりにかに読み始めたのだけど、まさに貪るようにのめり込んでいた。
そう! 本来の私はいつも『夢』の中で生きていて、「乙女チックちゃん」と笑われたこともあった。
自然が好きでバラが好きで、それで軽井沢に住んだのに、いつの間にか超現実な生活の中で溺れていた。『秘密の花園』から『超現実社会』に引っ越していた。
今の私は本当の私じゃない。本当の私は『セーラ・クルー』であり『メアリ・レノックス』であり、そして『アン・シャーリー』だったはずだ。
いつの間にこんな私になってしまったのだろう……と、その原因は15年近く前にあった、あの事からだ。そして夫の病気……と考えてしまった。そのせいか脳がパニックになったようだ。(多分!)もともと寝付きが悪いのに、誘眠剤を飲んでも寝付くまでに2時間半もかかってしまった。そしてその2時間半の間に私がセーラやメアリやアン的に考えると、ゆとりのないギチギチしている私に、夫が『孤道』にこと寄せてこの2冊の本に出会わせたのだと、思うことにしていた。
梅雨に入り、ビルを囲む木々も沢山の水を吸って元気になることだろう。その木の成長を見ながら、私もセーラやメアリ、アンに戻る訓練をしよう。でも、でも……、乙女チックちゃんはずいぶんトシをとってしまった。訓練の結果は心の中にしまっておくだけにしよう。そうでないと『大人』からみたら、ただのバカに見えるだろうから。

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