内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
梅雨
2016.6.13 Mon
梅雨入りしてからも東京は雨のない日が続いていた。曇天だったのが突然ピーカンだったりして、でも今日はほぼ1日中雨らしい。
気圧の変化は健康な人にも気分的にも影響を与えるのに、病気の人には余計に影響が出るのかもしれない。
療養中の夫を見ていても、それは分かる。機嫌が悪いな、わがままだなと思う日は、偶然だろうけどたいてい天気が悪いのだ。
からだがだるくて、どうしようもないらしい。「辛い! 辛い! このからだを何とかしてくれ……」と訴えられても、私にはどうしようもなく、辛いことこの上ない。
気分転換させるにも外に出られないし、仕方なく廊下や屋根の下をゆっくりゆっくり車椅子を押して誤魔化すしかない。
『浅見光彦倶楽部』時代の思い出や、ワールドクルーズでの各地の思い出話、そして少年時代に歌った歌などを二人で口ずさみながら時間をつぶしている。そんな風景は多分ほほえましいのだろうけど、当人にとってはそれどころではない。
今日はどうやって時間をつぶそう。どうやって『辛さ』から気をそらせよう……と、窓を打つ雨を恨めしくにらんでいる。
でも雨が降らないことには植物たちが可哀想だし……。困ったことだ。