内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
青春
2016.6.22 Wed
先日、療養中の夫が、その後の経過のチェックをするためにMRIの受診をした。
検査が終わって部屋から出てきた夫がニコニコしている。技師さんに、「内田康夫の作品は僕の青春でした」と言われたそうなのだ。
青春かア! いい言葉だなア! 技師さんは読書三昧の青春だったのだ。
そういえば、私も読書三昧の青春だった。手当たり次第に読んだような記憶があるが、思い出してみると、三島由紀夫は大人になってから読んだような気がする。あの頃は石川達三だったり新田次郎だったり丹羽文雄だったり。何を基準に選んでいたのだろう。笑ってしまう。
そして短大時代は三本立ての名画座に入り浸っていたっけ。
お金もなく友だちもいない寂しい青春。でもあの頃の寂しい青春のおかげで今の私があるのかもしれない。
梅雨で鬱陶しいし、夫は時々わがままを言うしで少しブルーになっていたが、「内田康夫は青春だった」で、久しぶりに気持ちだけ青春に戻っていた。