内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
明けまして……
2018.1.3 Wed
明けましておめでとうございます……と言っても、2018年は2017年の続きであり、1月1日は12月31日の次の日であるという、それだけのことなのだけど……。
こんな冷めたことを、私はかなり昔から心のどこかで思っていた。
クリスマスに騒いだ熱が冷めたとたん神社にお参りし、そしてお釈迦様に甘茶をかけて、今度はどんな宗教の行事をみつけて騒ぐのだろうかなんて、可愛くない私だ。
でも1月1日は一応は新しい年になったことだし(新しい月になっても別に!)と、元日だけはお正月らしい時間を過ごし、2日からはもう日常に戻っていた。
作家である夫は、それこそ盆暮れもなく、世間が遊んでいるときも働いていたので(もっともテレビのスポーツ観戦と囲碁だけは、原稿の締め切りがあろうとなかろうと幸せな時間を過ごしていたけれど)、暦の上の行事とは縁遠い暮らしだった。
夫が倒れて長い療養生活に入ってからは、世間とは離れた日々になってしまった。
そして療養生活が長引くにつれ、私のいろいろな付き合いは減り『世間』はますます狭くなりそうだ。
私は当初、なんで夫なの? なにも悪いことをしてないし、一所懸命働いていたのに、なんで夫がこんな病気になってしまったの? なんで夫なの?と、不条理な出来事を恨んでいた。
でも夫を介護するうちに、夫みたいなそして私みたいな思いをしている人は、世の中には大勢いるし、可哀想なのは私だけではないことを思い知った。
テレビのニュースで知る老々介護の末の無理心中など、お気の毒なことだと他人事のように心のどこかで思っていた。
でも一歩間違えば自分にも起こりうることだった。『妙な病』は『人』を選ばないのだということを、変な言い方だけどそれこそ思い知った。
私たちの場合は経済的にはまあまあ恵まれている上に、子どものいない私は友人たちや編集者の方々がたくさん助けてくれている。不条理を恨んではいけないと、完璧ではないけど思い始めた。
不条理を恨みながら介護をしていた結果は、鬱・円形脱毛症・まぶたの痙攣を何度も・ピロリ菌・口内炎を何度も・疲労骨折・腕の筋肉引き攣れ’etcで、何もいいことはなかった。
私の気持ちの落ち込みが、夫にいい影響を与えるわけがない。まだ心の隅に残っている不条理にたいする恨みはさて置いて、年も改まったということで『明るく穏やかが一番』を心に決めてのスタートです。何たって、倒れた人が一番辛いのだから。
私と同じ境遇ってちょっとオーバーだけど、家族を見守っている人、今年もガンバッペ!!