内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
お礼
2018.3.24 Sat
夫が去って10日。
お見送りの日は途中から小雨で、いかにも『内田康夫』を見送ることの『哀しみ小雨模様』だった。
我が家……というか、私たちはまったくの無宗教だった。それで普段から「宗教色なしのお別れにしよう」と話し合っていたので、ほんとうに近親者のみで夫を見送った。
最期の夫の顔は、それは穏やかだった。
夫に覆い被さるように泣いている私に、「何を泣いているんだよ! ばァか!」と、笑い出すのではないかという、すこし笑っているような顔をしていた。
それにしても夫を見送る時のヘルパーさんやスタッフたちの、温かい気持ちには本気で泣いた。
心がこもっていて、そのとき私が流した涙の量は、夫がいなくなった哀しみに流した涙の次の多さだったかもしれない。
夫を見送ったものの、私はまだ「ああハラ減った!」と、夫がひょっこり顔を出すのではないかと、現実を受け入れられていない。
しかし現実はこれから始まる。個人の哀しみもなにも容赦しない、超現実的な片付けはこれからなのだ。「しっかりしろ! ユミちゃん!」
以前から夫は出版社(編集者……ではない。念のため)よりも読者の方が大切と、出版社主催のお別れ会はしない。それより遠くの読者が行きたいときに献花ができるように、一日だけではなく、一ヶ月ほど記念館をオープンにしてお別れをしたい」と言っていた。
故人の意を汲んで、『浅見光彦記念館』で3月23日から一ヶ月間『内田康夫お別れ会』のための献花台を置くことにした。
私は本来なら一ヶ月間、記念館に詰めていて、献花にいらした方々にお礼を述べなければいけないのだけれど、超現実な問題の片付けがある。しかたなく昨日の初日に日帰りで軽井沢に帰って来た。
なんとまァ! たくさんのお花や弔電。そして献花にお越しくださった方々の温かさに涙がホロリ。ホロホロリだった。だって、みなさん、夫のために泣いていらっしゃるのだもの。
またまた本来ならば、お花や弔電を下さった方々に、直接お礼を申し上げなければ礼を失するのだけれど、本当にごめんなさい! ブログで失礼なのは承知の上で「心からお礼を申し 上げます」
これからはなるべくチョコチョコと軽井沢に帰って、4月1日にオープンするティーサロン「軽井沢の芽衣」でおしゃべりをしたいです。
みなさま、これからも『内田康夫』の作品をよろしくお願いします。彼の作品は、読み返す度に新しい発見があり、また読み返しに耐える作品です。そしておついでがありましたら『早坂真紀』(本当についででいいです)もよろしくお願いします。