内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
夫婦離れ
2016.8.10 Wed
8月7日の財団「友の会」のイベントのために、6・7・8日と3日間、軽井沢に帰ってきた。
療養中の夫を連れて帰るわけにはいかず、かと言って毎年恒例になっている8月第1日曜日のイベントに、暑いなか集まって下さる方々の好意にお返ししなくては……と、思い悩んだ末に決心したのだ。
ついでに軽井沢でなければならない事務的な仕事も片付けてこようと、ヘルパーの資格を持つ友人たちに夫を托して、一人で帰ることにした。
軽井沢に向かう新幹線の中でも、寂しがっているだろうなと、絶えず夫のことが気になる。
7日は心づもりの人数を超えた会員さんがいらしてくださって、やはり帰ってきてよかったと思いながらも夫のことが気になる。挙げ句の果てに、イベントの〆の挨拶に夫のことを言おうとして、泣きそうになってしまった。
そのことを言うと、「夫離れができてない」と、回遊魚A(休むことなく働いている親友の一人)に笑われた。
私はベリーショートで、引かれるような後ろ髪なんてないのに……。
夫は夫で「カミさんがいないと、不安でたまらない」と言っていたそうだ。妻離れができてないと笑われた。
船旅に何度も出ている私たちに、「密室のような逃げ場のない船で、1日中顔を会わせていなければならない長期の旅に、それも何度も出かけるなんて信じられない」と笑われたこともあった。
そう言われれば私たち夫婦はこの49年近く、いつも一緒だった。それが当たり前になって、いつまでも夫婦離れのできない夫婦になってしまったのかもしれない。