内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
誇り
2016.8.13 Sat
美容院に行ってきた。
いつもの美容師さんにカットをしてもらいながら、軽井沢に行って夫のことを言おうとして泣きそうになったことなどをペラペラしゃべっていた。
「今でも夫のことを口にすると、泣いちゃうかもしれない……」と言うと、「泣きたくなったら、いつでもここに来て泣いて下さい」だって。
「ありがたいけど、そんなことを言わないで……。それでなくても私の髪は短いのだから、毎日ここに来たら、そのうち丸坊主になってしまうじゃない」と、こんなときにも笑いをとるなんて……。
イギリスの貴族はどんなに哀しいときも、どんなに辛いときも、ブラックを含めてジョークは忘れないそうだ。
やっぱり私の前世イギリス貴族説は本当かも……と思ってしまった。
私は前世だの来世だのということは一切認めないのだけれど、『私の前世はイギリス貴族』説だけは吹いている。
夫に「アホか!」といわれても、他人を傷つけるわけじゃなし、そう思っていれば幸せなんだからいいじゃない!
でも、このところ、私は自分がイギリス貴族だったことをすっかり忘れていた。
夫が倒れて何にもかも一人で片付け、私が答えを出さなければならないことが多かった。それでずっと気が張り詰めていて、気持ちのゆとりを失くしていたのだなァ! こんな時だからこそ、毅然とした貴族としての誇りを持っていなければいけないのに、私はすっかりうろたえていたのだ。
さァ! 気持ちをシャンとさせるぞ。貴族としての道を歩くぞ!