内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
夫へのラブレター
2019.3.13 Wed
あの日から1年が過ぎました。あっという間の1年でした。でも、あなたを介護していた日々が、遙か昔だったような気がします。
『孤道』の文庫版が届きました。未完だけれど、あなたが残した最後の作品です。
単行本は読めませんでした。
読みかけたとき、あなたのあの日の姿が目に浮かび、どうしても読めなかったのです。でも文庫版は読むことにしました。感動しました。
痛みに悶え苦しみ、これから自分がどうなるのかという恐怖と不安と闘いながら、よくもこんな作品を書いたものだと、私は自分の夫を誇りに思います。そして闘病中に私を必要とし、甘えていたあなたを思い出し、あなたがとても愛しくなりました。
そして1年経った今、あなたがとても恋しい。たまらなく会いたい。
今、どこにいるのですか? もう締め切りに追い立てられることもなく、こころ穏やかにしていますか?
時々、私のそばに来ていることは知っています。いずれ私もそばに行きます。それまで時々でいいですから、そばに感じさせてください。夢で会いにきてください。待っています。
またね。