内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
終焉
2016.9.5 Mon
バスを待っていたら、バス停の標識塔(?)のところと、道路の排水溝近くにアブラゼミの死骸が落ちていた。
そういえばミンミンゼミやアブラゼミの声が少なくなって、代わってヒグラシやツクツクボウシの声が増えている。
「カナカナカナ……」だの「ツクツクボーシ、ツクツクボーシ……」なんて声を聞いていると、そろそろ秋なんだなァと、夫の車椅子を押して日焼けした腕がちょっと寂しい。
目の前の空にトンボが群れている。
私はセミやカナブンなどの死骸はよく見るけれど、鳥が落ちて死んでいるのを見たことがない。
鳥だって生命の終わりはあるのに、どこでどうやって終焉を迎えているのだろう。
そしてセミにしても鳥たちも生命の灯が消えるとき、どんな気持ちでいるのだろう。
「ミーンミーン……」と鳴いて、突然パタッと地面に落ちるのかな? そんな終わりの迎え方って楽だな。目がさめたら逝っていた……なんていいなと思っているとバスが来た。
お年寄りの多いバスに揺られながら、私の生命の終焉はいつ・どこで・どんなふうに……と、考えこんでしまった。私も自分の『死』を考える年齢になったってことか。
生まれてきたからには必ず訪れる『終焉』。
それまでの長いか短いか判らない時間を、他人様に迷惑だけはかけないように、大切に真面目に生きようっと。