内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
黄昏
2016.9.8 Thu
♪ 暮れそうで暮れない黄昏どきは ♪ って歌があったが、ほんとうに黄昏どきって、不思議な時間帯だ。
暗いってほどではなく、かと言って明るくもない。何となく切なくなって、何となく人恋しくなって、独りぽっちが寂しくなって、誰かに電話をしたくなるのも、この時間帯だ。
暗いってほどでもないのだけど明るくもないので電気を点けても、部屋は一向に明るさを感じない。
ビル群を見ても、灯りが点いているようには見えなくて、黄昏どきがあまりに寂しくて、時間が灯りを盗んでいるのかな?……なんて、乙女チックなことを思ってしまう。
『黄昏』って、お昼が終わって夜に近づくころで、人生の『黄昏』って言えばもう晩年だ。
あとはもう『終わり』を待つだけなんだなと気がつくと、部屋はいつの間にか明るくてビルの窓灯りが華やかで、滅入っていた気持ちが少し明るくなっていた。