内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
また妄想
2020.4.16 Thu
大変な病気が流行ったものだ。
高校時代の『世界史』の授業で、スペイン風邪やペストなどというウイルスによる病気を習ったことがある。今回の『新型コロナウイルス』も世界史に名を残すのではないかと思う。
スペイン風邪もペストもウイルスの飛沫によるもの(多分!)だけど、そのころの人間の行動範囲は限られていた。それでもスペイン風邪は人類史上最悪の感染症と言われていたし、ペストなんて致命率が60%で、イタリアでは全滅した村もあったとか。
現代は医療の発達で致命率は減ったかもしれないけれど、行動範囲が地球規模になっているから、一つの国の一地方で発生したウイルスの対応を誤って、全世界に広げてしまった。
私は感染が怖くて外出後の手洗いとうがいは欠かさず行っているし、引きこもりに慣れているから相変わらず引きこもっている。
引きこもっているけど「あの人、コロナでなく餓死したんだって」と言われたくない。それで買い物に行くときのアイテム。
スーパーの駐車場に着いたら、まずマスク、そして調理師がしているビニールの手袋をする。
当然買い物かごや商品にさわるのだから、もし私がウイルスを持っていたら商品に残すかもしれないし、他人のウイルスを貰うかもしれない。過剰かもしれないけれど、私は感染が怖い。感染したくないしさせたくないから防護は万全。
今朝、ボーッと外を見ていた(最近、引きこもりが過ぎて、惚けがひどくなったかも)。
軽井沢の最低気温はまだマイナスで、カラマツの芽吹きもまだ先だ。
ふっと動くもの……、リスだった。
枯れ枝を渡り、立ち止まっては小首をかしげ、幹を逆さに滑り下りたりして、勿論私に見られていることなど気づいてない。
「おいで!」って言ってベランダに来てくれたら、夫を交えて三人でおしゃべりするのになァ……と、つかの間、コロナを忘れて妄想の世界に漂っていた。