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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

シラカバ

2020.5.15 Fri

軽井沢といえばシラカバとを想う人は多いと思う。
シラカバは長野県の県木であり、美智子上皇后のお印でもある。
そして漢字で書く『白樺』は、志賀直哉や有島武郎、武者小路実篤たちを中心とした同人誌というか文芸誌の名前だ。
軽井沢に住まいを移したとき、庭にはもちろんシラカバを注文した。ちょっと苦笑いしながら植木屋さんは言った。
都会の人はすぐシラカバ・シラカバって言うけど、シラカバは虫がつきやすいし、寿命もそれほど長くないのであまり薦めない……ということだ。
それでも軽井沢にはシラカバが似合うでしょうと、3本植えた。植木屋さんの言う通り、いまは2本しかない。おまけにそれもそろそろ寿命っぽい。
ティーサロン「軽井沢の芽衣」オープンの時は、お店の前の通りをスコップをぶら下げて、お店の前の庭によさそうな幼木を探した。
私の力で何とかなりそうなシラカバの幼木を見つけたので、私はピンヒールのままシャベルで引っこ抜いてお店に移植した。
あれから20数年。駐車場脇でそのシラカバもみすぼらしくなってしまった。そしてそのシラカバが生えていた場所が「浅見光彦の家」(*)だったので、別に盗んだ わけではなかったと、いまになって一安心。
そして最近聞いたのだけど、我が家のシラカバがみすぼらしいのは、標高が足りないからで、あと100メートルほどと高くないと、あの真っ白な肌にはならな いのだそうだ。納得!
いま『……芽衣』と『浅見光彦の家』の間の敷地の木が、きれいさっぱり切り倒されている。これから植栽するのだろうけど、こういうことなら、めぼしい木をもらっておけばよかったなと後悔しきり、残念!


(*)旧・宿泊施設「浅見光彦の家」

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