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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

カラマツ

2020.5.17 Sun

軽井沢と言えばカラマツを思い浮かべると思う。
北原白秋の『落葉松』という4行詩だってある。
落葉松林の道を過ぎたり出たり奥に入ったりと、ずいぶん長い詩だけど、落葉松林の寂しく哀れさがしみじみと心に沁みてくる。
カラマツの芽吹きのことは先日のブログに書いたけれど、晩秋の落葉松林はほんとうに素敵で哀しくて切なくて、胸がキュンとする。
以前キャリーが(夫が100%ボクが世話をすると言って連れてきたコリー犬で、夫は100%と5%の区別がつかなかったようだ)いたころ、毎日の散歩は私の日課だった。
晩秋の森の道は黄金色の雪(落葉松の落ち葉だよ!)が降り積もり、振り返ると私とキャリーの足跡がずっと続いている。森は静まりかえって、時々カケスの声が聞こえるだけだ。黄金色の雪はサラサラと音をたてて肩に降りかかるしで、晩秋の落葉松林の素敵さが想像できるだろうか。しかし……。
我が家のある森のカラマツは、聞くところによると、元々は電信柱用に植栽したのだそうだ。しかし電信柱はコンクリート製になった。森の中の電信柱もいまはコンクリート製だ。
かっては自分がなるはずだった電柱を目の前にして、カラマツは複雑な気持ちでいるだろうな。それでもカラマツはひねくれることもなく、まっすぐに天を目指して伸びている。
我が家のベランダの前のカラマツは、20メートルを超しているかもしれない。風にゆっくりと揺れるカラマツを見上げると、「めまい?」と錯覚しそうだ。
しかし大地から吸い取った水分がてっぺんまでいくのに、どのくらいの時間がかかるのだろう。

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