ブログ

HOME > 早坂真紀つれづれ

内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

あいつ今何してる?……2

2020.8.13 Thu

私は中学校のときから、部活は文芸部一筋だった。
小学校のときの将来の夢は、お嫁さんと言ったり幼稚園の先生だと言っていたが、お嫁さん……と言ったのは、たぶんウエディングドレスに憧れていただけだろう。なぜ幼稚園の先生と言ったのか、分からない。だって私は子どもはあまり好きではないから。
中学生になってからは少女雑誌の編集者だったり、バレリーナだったり。
高校生になってからは編集者か作家になりたいと思っていた。
授業中にも小説のストーリーを紡いで妄想にふけり、いつもボーッとしていた。だから成績がいいわけがない。授業中に突然現実に戻ったとき、いま教科書のどこを開いているのかも分からないほどだった。
授業中はボーッとしていたが、文芸部の同人誌(?)の編集には夢中だった。
県立高校だから部費は少ない。それで同人誌の印刷製本は、なんと刑務所だった。もちろん顧問の先生同伴だけど、校正のために刑務所を入るとき、作業に出る囚人たちを乗せた車とすれ違った。
刑務所外で作業をする人たちだから出所間際か模範囚なのだろうけど、セーラー服姿の乙女に口笛「ピーピー!」や「出所したら遊ぼうー!」なんて。
純な乙女はツン! とそっぽを向いていたが、今だったらニヤニヤ笑って手のひとつも振ってやるのに。
いま思うと、いくら安いといっても、なんで刑務所だったのだろう。不思議とも思わなかったけれど、職業訓練のひとつだったのかな? いまになってみれば面白い思い出だ。
期末試験が近いというのに同人誌編集に夢中になっている私を見て、「他人のために自分を犠牲に出来る人は、『愛』を大切にする人だ」という手紙をもらった。べつに犠牲でも何でも無く、ただ勉強より好きでやっていただけだけど、青春だなァ!
たぶんラブレターだった……と思うけど『あいつ今何してる?』
そして「もうすぐシャバに出るから待っててね」と言った『あいつ今何してる?』

« 

2020.8.16 Sun 人生とは……

 »

2020.8.7 Fri あいつ今何してる?