内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
ぐうたら
2020.7.8 Wed
外出自粛が解除されたからって、べつにコロナが収束したわけではない。解除されても状況が急に変わるはずがない。それで私は感染が怖くて(もしかしたら私が保菌者で誰かに感染させるのかもしれない)不要不急以外は、家の中でじっと『我慢の子』だった。空調の故障だって、修理に来てくれる人には申し訳ないけど、感染が怖くて暑さを我慢していた。でも考えてみると、修理に来る人だって感染は怖いのよね。
相変わらず感者数が減らない……というより、全国的に増えている。この人たちは、自粛が解除されてすぐ元に戻った人たちと、その接触者らしい。こんな状態に私は、ますます『我慢の子』になってしまう。
そのうち我慢することが普通になってしまって、感染が怖いことは怖いけれど、家から出ること自体が億劫になってしまったらしい。
ご飯、何食べよう……と冷蔵庫をのぞいて、口に入るものがあれば「これでいいや! 買い物は明日にしよう」と言うほどのぐうたらぶりだ。
友人の回遊魚AやBにしても、いまは回遊魚の名前を返上したらしい。すっかり出無精になってしまって……(いや、AかBかは言えないけれど、片方は少々デブ症かも)やはり買い物の外出も億劫になってしまったと言っていた。
今ではちょっとした用事の電話でも、日頃の憂さを晴らしているのか、気が付けば1時間以上もしゃべっているではないか。気持ちはぐうたらになっても、お互いに口だけは達者なままらしい。
こんな状態が続くと、社会生活に於ける人間との関係が崩れるかもしれないと思った。
会社にしてもテレワークなどで、顧客や社員同士が会わなくても仕事はできる。意志の疎通は計れても、そこには体温がないし細やかな気遣いも伝わらない。外出するわけでないから身だしなみもゆるくなって、ますますぐうたらになりそうだ。
テレワークで済むのならと、地方への移住を考えている人もいるようだ(私たち夫婦は、地方への移住のパイオニアだ。自然の中での暮らしに憧れていて、40年まえに「電気さえあればどこでも住める」と軽井沢に移住したのだった)。
しかし……、そうやって地方での在宅勤務が増えたら東京のオフィスは縮小される。そうなったら東京に密集しているオフィスビルはどうなるのだろう。家賃など値下がりするのかな?
先日「東京のマンションを買いませんか」と電話での勧誘があった。この営業マン、値下がりを見込んでその前に売ろうとする優秀な営業マンか?
ぐうたらが増える中、こんな優秀なのもいるんだ。いや!待てよ。この人も電話だけで仕事を済まそうとしている『ぐうたら』かも。
マンション? 買うわけないでしょ!