内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
見ちゃった!
2020.9.23 Wed
我が家のベランダに張り出していた桑の木。その桑の実がすっかり無くなっていた。小鳥たちのお腹に収まって、メデタシメデタシ!
そして今、名前は分からないけれど、ベランダの端っこに張り出している木の、細っこい枝先の実が赤く色づいている。
春先には白い毛のふさふさとしたイモムシのような形の花だったのが、いつの間にかその白い毛が丸っこい青い実になり、そしていつの間にか赤くなっていたのだった。「暑い!暑い!」と不満を言っているうちに、季節は動いていた。
何の木だろう。葉っぱの付き方はフジのようだし。実は垂れ下がってないまばらなブドウのような、お粗末なナンテンのような……。違うかな?
実が色づいているのを鳥たちはお見通しで、入れ替わり立ち替わりやって来る。
野生の鳥が実をついばむところを見たくて、私はずっとガラス戸を閉めて待っていた。
来た! 木の名前も知らなければ、やって来た鳥の名前も知らない。体長15センチほど(手元に物差しはあるけど計らせてくれないだろう)の、ツグミのようなヒヨドリのような……。違うかな?
枝に止まるのだけど、何しろ枝は細い。ゆらゆらしながら足場をかため、細い枝に器用に止まって実を狙っている。ガラス戸の前の私が動くと観察していることがバレてしまうし、せっかくのランチタイムの邪魔をするので、私は息を殺してじっとしていた。
見ちゃった! 1メートルほどのところに私がいることに気づかず、こっちを向いてパクッ!
喉の一番奥、何だか胃まで見えるようなくちばしの開き方だった。姿のいい鳥ではなかったけど、無防備な姿で木の実をついばむ姿は可愛かった。