内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
顔も腕も
2020.10.19 Mon
久しぶりに妹がやって来て、久しぶりにペチャクチャと姦しく井戸端会議が楽しかった。
朝の洗面所にまでおしゃべりが続いて、「よくそんなにしゃべることがあるもんだ」と夫に笑われたことを思い出し、またそのネタでペチャクチャ。
「エッ? あら!やだ!」
妹がおしゃべりに夢中になって、腕につけるはずの日焼け止めのクリームを、顔にぬっていたのだった。
「そのトシになって、もう腕の皮膚も顔の皮膚も変わりないからいいじゃい!」と私が言うと、「あと○年もすると(私と妹の年齢差)、顔の皮膚も足の甲の皮膚もかわらなくなるもんね」と返された。
ウーン! さすが我が妹だと思った。
以前はTVの地上波のCMは、カメラワークも素敵な普通の(って言うのかな?)企業の製品が主だった。そして通信販売のCMは、ほとんどがBSでだった。それが最近では、地上波でも通信販売のCMがかなり多くなった。
コロナのせいで外出の自粛。それで通信販売が増えたせいかもしれない。
そして経費節減なのか、タレントもアマチュアや社長さんの出演が多い。
化粧品のCMは「何才にみえますか?」と老け顔を見せ、この商品を使用したらこんなに若か見えになります式が多い。
意地悪な目でチェックすると、若か見えの時の画面の多くは、かなり『紗』がかかっている。紗をかけると、私だって年齢より若く見えるかも。でも紗をかぶって歩くわけにもいかないしなァと、悩ましい。
ま、いずれは妹の言う通り、顔の皮膚も足の甲の皮膚も見分けがつかなくなるのだから、いまさらどうでもいいか。
人間は洒落っ気がなくなったらお終いだと聞く。なにがお終いなんだろうと思いながら、何とかさん(何才当時)のニッコリ微笑む『紗』のかかったブラウン管の前で、自分の足の甲をみてため息をついていた。