内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
生命力
2020.11.18 Wed
来なくてもいい、来ない方がいい「ン?回目」の誕生日が来て、覚えてなくていい、覚えてない方がいいのにお花が届いた。
口では「何だよう! 誕生日なんて本人が忘れているのに、うれしくないよう」と言いながら、それでもうれしかった。
大切に水やりをしていたが、生命には終わりが来る。美しかった花もしおれたり枯れたり、我が身を見る思いだった。
終わった花を片付けていたら、紅葉した何本かの蔦の一本に新芽が出ている。新しい生命を捨てるに忍びなくて、蔦だけ残してカップに活けた。
毎朝水を取り替えてふと気が付いたら、茎から白いひげのような根が出ているではないか。そして新芽が控えめに開いていた。紅葉した葉と茎の間から生命が芽生えただなんて、ますます捨てられなくなって、庭に移植することにした。
でも軽井沢はこれから厳冬期、寒さ厳しきシーズンに入る。それでなくても木々の葉は大地に散って、木々は冬眠に入るのだ。いま移植したら枯れてしまう。仕方なく春が来るまで蔦はカップ生活で我慢してもらうことにした。
『白いひげ根っこ』は初めは一本だったのに、日に日に増えて成長していく。我が子の成長を見守る親の心境だけど、この根っこ、春が来るまでどのくらい成長するのだろう。カップの中なのに凄い生命力だ。