内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
冬の星座
2020.12.18 Fri
目が覚めたら、まだ4時半だった。
年だなァ!と嘆きながら、物音一つしない闇に耳を澄ませると、シーンという音が聞こえる。
眠らないとシワが増える。しかし右に左に寝返りをしようと、読みかけの『津軽殺人事件』を読もうと、何をしようと眠くならない。逆に目が冴えてしまった。 こんな時に殺人事件を読むのでは、目がさえるのは当たり前かと、仕方なくベッドから出てしまった。
ベランダ側のガラス戸とカーテンの間に挟まって、町は目覚めているのかチェックした。道路の信号と街灯、お店の看板の灯り、時々走る車のヘッドライト以外は、やはり眠りの底らしい。
しかし!しかし! 葉を落としきったカラマツのの枝々のすき間で、星がいっぱい瞬いていた。目の位置を少しでも動かすと枝に姿を隠す星や、枝の横から輝き出す星、まるでプラネタリウム……、満天の星だった。
ワールドクルーズのときの、星空教室を思い出してしまった。あのとき船の最上階のデッキで、夫と並んで寝転んで見た満天の星空。青っぽい星は生まれて間もない星で、黄色い星は間もなくその生命を終える星だとクルーは言っていた。
じっと見ていると夜空に目が慣れてきて、ますます星が増えてくる。青っぽい星黄色い星と、本当にキラキラと瞬いているのがわかる。
いま流れて消えた光りの筋は、錯覚でなければ流れ星だったのかもしれない。いつ流れるのか分からないそんな瞬間に、願い事を3回唱える? 願い事なんて叶うわけがないってことかな?
♪木枯らし途絶えて 冴ゆる空より 地上に降りしく♪ と、知らない間に口ずさんでいたのはいいけれど、肩がすっかり冷たくなって咳が出てきた。
あしたコロナと間違えられるとイヤだからとベッドに戻ったが、興奮状態だったのか一向に眠気は訪れなかった。