内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
トシだなァ!
2016.10.21 Fri
付き合いがそろそろ四半世紀にもなろうかという友人の夫人が、私より20才近く若いというのに入院した。その友人は仕事をしながら妻を見舞っていて忙しそうだ。
そして付き合いが10年ほどの友人(この方は私より10才年長)は、一昨年ご主人を見送ってから1年過ぎたころ、突然足が立たなくなって、車椅子生活になってしまった。
そしてそして、友人Aのご主人は最近物忘れがひどくなり、頑固になって短気になり癇癪持ちになったと愚痴っていた。
我が家の夫も療養中だし、みんなが健康で平穏に暮らせるのは、人生の一部の時間だけなのだなァと、しみじみと感じ入っている。
「……ということは、健康である残りの時間を大切にしなくてはいけないということね」と妹とおしゃべりをしていて、私は思いきり大きなクシャミをした。
ナ・ナ・ナ・何と! さっき飲んだ胆嚢の薬が一粒、鼻から飛び出したではないか。
アハハと笑った妹が「私だってご飯粒が出てきたことはあったわよ」と慰めてくれた。
ご飯粒なら可愛いけど、胆嚢の薬じゃ色気も何もあったものじゃない。
私もトシだなァ! そろそろ誤嚥に気をつけなくてはいけないトシになったのだと哀しいが、でも鼻からだってどこからだって、出てきてくれてよかった。そのまま気管に詰まっていたら大変なことになる。
「出てきてくれてありがとう!」なんて、冗談を言っている場合ではないよね。