内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
困った!
2021.2.6 Sat
テレビを見ていて、どうしても気になる言葉がある。
これは私の思い違いか思い込みかは分からないけれど、タレントや歌手の方が、「私の歌で(或いは芝居で)みなさんに感動を与えるように……」と言う、『与える』という言葉だ。
この場合「感動していただけるように……」なのではないかと、気になって仕方がない。『与える』って、完全に上から目線じゃないのかなァ。
「お前の思い違いだよ! そんなことどうだっていいじゃん」と言われかねないので、私はテレビに向かって「あなた、そんなに偉いの?」と一人で突っ込んでいる……と、退屈しないよ。
それと一人で腹をたてていること。
政治家がいけないことをした後の記者会見で「これからは、誤解を与えるようなことはしないように、心からお詫びを申し上げたいと思います」という言葉。
これにも私はテレビに向かって突っ込みを入れている。
「お詫びを申し上げるのではなく、申し上げたいと思っているだけかよ! 思っているだけだから、同じ事を繰り返しているんじゃないの? それに『誤解』じゃなく事実だし……」と。
この「思います」という言葉には、まだまだ言いたいことがある。
次回にと思ったが、ついでに書いてしまおうっと!
例えば料理の味見をするときに、食べ物を口に運びながら「では味見をしてみたいと思います」って、「味見をしてみます……じゃないの?」。
例えば「メダルを目指して頑張りたいと思います」。「エッ? 頑張るのではなく、頑張ろうと思っているだけじゃダメじゃん」等々、その気になってテレビを見ていると『思います』のオンパレードだ……って、このくらいにしておこう。
百歳で亡くなった方が、以前おっしゃっていたことを思い出した。
テレビや政治に対して怒ってばかりいると、長生きするのだそうだ。私、長生きするかもしれないと思ったが(この場合の『思う』はいいのだ)、美人薄命と言うしなァ!……と、以前夫に言ったことがある。そのとき夫は薄笑いを浮かべながら言った。
「美人になりたかったら、二十歳までに死んだ方がいいよ」。
私、もう、二十歳より限りなく百歳に近いし、困ったな。