内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
3月13日……
2021.3.14 Sun
夫が旅立って3年が過ぎた。アッという間の3年だった。
3年半の介護中は、終わりが見えなくて苛立ったこともあったが、終わってみればその3年半もアッという間だった。
しかし私は、夫の『生命』が消えて、私のそばから夫がいなくなったという現実をまだ理解できずにいる。
ツインベッドの一つが無くなり、書斎も片付けたというのに……だ。
ベッドで寝返りをしたら、瞬間、隣りにベッドがあるような気がしたり、書斎だったところをのぞいたら、背中を丸めてパソコンを叩いている夫を感じたり、今にも玄関のドアを開けるガチャガチャという鍵の音を、耳をそばだてて待っていたりしている。
考えてみたら、なんと未練たらしい私なんだ。
3月13日、北区の滝野川会館で『軽井沢のセンセを想う会』があった。
コロナ騒ぎで企画段階より縮小されたが40人近くが集まって下さった。生憎の雨にもかかわらず、遠く和歌山や大阪から、あの顔この顔が懐かしかった。
夫が闘病中、「早く軽井沢に帰らないと、みんながぼくを忘れてしまう」と言って、ずいぶん私を困らせたけれど、皆さんちゃんと覚えて下さっていて、思い出話にセンセは忘れないけれど時間を忘れそうだった。
滝野川会館といえば、7年前に入院中の病院を一時抜け出して、夫のお誕生会に顔を出した所だ。
「ぼくのために集まってくれているのに、顔を出さないと悪い」と、スタッフと私に両側から支えられて顔を出したが、夫のあまりの面やつれに皆さんがドン引きしていたっけ。
翌3月14日はわが夫婦の溺愛犬のキャリーの命日。
夫が13日でキャリーが14日だから、私は15日かな?なんて思っていたら、春雷などとロマンティック騒ぎではない凄い雷だった。
それにしても、夫の介護などのすべてが終わって、これから残り少なくなっていく私の時間は、私のためだけにつかうぞと思っていたら『コロナ』。
外出もせず籠の鳥状態で、コロナのバカ!