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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

芽生えて、そして……

2021.4.1 Thu

ボケーッと窓の外を見ていたら、森のそこここが、何となく厚さがコンマ2ミリほどの緑のベールがかかったようだった。
春の訪れなんだなァ……と、「今ごろ何を言うか」と思う地方の人もいると思うが(何を隠そう、私だってこの間まで東京にいて、花見に群がる人たちを怒っていた)、軽井沢の春はこれからなのだ。
あの寒さを耐え忍んで草木が芽吹くのはそれは感動もので、夫の死をまだ現実の事と受け入れられなくて、グチグチしている己の軟弱さが情けない。
そんな私を叱るかのように(おお!文学チック)、森の芽吹きの前だというのに、キャリーの『永遠の寝室』の前のクリスマスローズの花が咲いていた。そして辛夷の枝先につぼみ(たぶん)がふくらみかけているではないか。
その隣で2メートルほどのモミの木が一本、立ち枯れていた。
何もかもが自然の移ろいなのだ。
『夜想曲……別れ』をドイツに住む知人に送ったら、早速メールで返事が来た。
自分は家族の尊厳死を前にしてどうするか、はっきりと答えをだせないそうだ。奥さんには延命措置はしないでくれと頼んであるが、しかし……と。
そしてこの本を読んで、改めてむかし親を見送ったときのことを思い出すきっかけになったそうだ。
芽吹いて、そして消えて行く。その消え方と消し方……「それが問題だ!」って、私はハムレットか?

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2021.4.7 Wed またトムとジェリー?