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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

春の訪れ

2021.5.11 Tue

ここ何年か、地球温暖化のせいで、軽井沢の春の訪れは早くなっていた。
私たちが軽井沢に移ってきたころは、北側の屋根から落ちて凍っていた雪が、下手をするとゴールデンウイークのころまで残っていた。最後の雪の塊がいつ消えるのか、楽しみにさえいていた(情緒だなァ!)。
そしてほとんど同時に春と初夏の訪れだったのが、いつの間にか温暖化が進んで、四月頭にはもう春になっていたのだった。
それが今年は四月中旬なのに、最低気温がマイナス4℃、最高気温が8℃とかで、軽井沢の桜の満開が四月下旬に近かった。
『春告げ花』と言われているコブシの花。普通は早春に咲く花なのだが、我が家の庭のコブシのつぼみを最初に見つけたのは四月上旬で、萼の先にちょこっと白い花びらが見えていた。つぼみは三つあった。
私は毎日飽きもせず、ベランダに出てはつぼみが開くのを待っていた。そのうちつぼみが五個あるのに気が付いた。
萼の先っちょに白い花びらがちょこんと顔をのぞかせているのだ。「お前たち、可愛いねェ」なんて、一ヶ月近くも毎日毎日花開くのを待っていた。やっと31日に二輪花開いて「おや?」。
枝々に萼から顔を出しているつぼみがまだあった。数えてみると15個だったり18個だったり。
五月に入って五輪が開いていて、つぼみは結局21個あった。全部が花開くのはいつなのだろう。つぼみはまだ増えるのかな? 毎日数えていた私は一体何だったのだ。でもうれしい、そして可愛い。
ん? つぼみを数えるときは『個』だったのに、開くと『輪』になるのはなぜだ?
軽井沢の街より標高の高い我が家。本当の春の訪れだった。でもまだ寒い。

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