内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
クッソーッ!
2021.8.29 Sun
キャリーがいて夫がいて穏やかで幸せな明け暮れを送っていた頃、我が家の住む森には、まだ別荘はチラホラとしか建ってなかった。
それでキャリーとの散歩はリードなしだった。
キャリーは自由に走り回り、ウンチをしに草むらに入って、ふさふさとした白い胸毛にたくさんのドロボー草をつけて出てきたりしていた(キャリーはうれしくてヘラヘラ笑っているけど、あとで胸毛から取るのが大変)。そのあいだ、私は私で一握りの木イチゴを摘んでいたっけ。
その木イチゴでジャムを作った。二人で一回分のジャムだったが、翌朝に「酸っぱい!」と夫の文句を聞きながら食事を楽しんだものだ。
そして時は流れて沢山の別荘が建った。キャリーは逝き、夫も逝ってしまった。
先日のブログで、我が家の庭のブルーベリーが色づき始めたことを書いた。私は何年かぶりにジャムを作ることを思いついた。多分一食分しか作れないだろうけど、あの幸せだった朝を思い出していた。
そして今朝、目覚めていつも通りに防犯カメラのスイッチを入れた。そこにはカモシカやキツネ・タヌキが庭を横切っている姿があるはずだった。
しかし……、クッソーッ! まだ軽井沢に居たんだァ! 二組のサルの母子が私のブルーベリーを食べているではないか。
こんなことを書くと動物愛護協会の方たちに叱られるかもしれないけれど、私はサルが大の大の大ッ嫌い。
ずるそうな目で人間の顔色を伺い、女性や子どもなど、弱い者をバカにする態度が許せない。そして屋根瓦を割ったり、カーポートの壁をぶち抜いたりするんだもの。嫌いだからといって捕獲するわけではなく、ただ「大ッ嫌い!」と喚いているだけだからべつに叱られることはないと思うけど……。
キツネやタヌキが食べたのなら「あら、やだ!」って許しちゃうけど、大嫌いなサルにせっかくの楽しみを奪われて、今朝の私は偏見のかたまりで相当プンプン!
お昼にカップラーメンを食べて「何と侘しい」と窓の外を見ていたら、シラカバの幹でコゲラがコツコツと昼食中だった。カップラーメンと虫と同じようなもんだと思ったら、ちょっと気が晴れた。