内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
ハテナ?
2022.1.16 Sun
このところ民放から時代劇が姿を消した。
時代劇は制作にお金がかかるので、世の中の景気が悪くなるとお金のかかる時代劇や、あちこちと地方を移動しなくてはならないドラマが、仕方ないけど減ってしまった。
私は別に時代劇ファンという訳ではないけど、暇にあかせて、BS民放再放送時代劇にケチをつけながら楽しく見ている。川を渡ってしまった俳優さんも多く、いまも現役で活躍している方々の若いこと。
そして……。
時代劇のお約束事で、終わり近くなると、必ず正義の味方の侍が悪人たちをバタバタと切り倒している。『正義は勝つ』だけど、一本の刀であんなにも沢山の人を切れるものだろうかといつも思う。
もちろんフィクションだけど、どんな名刀だって人体の脂や血糊がつくと切れが悪くなるし歯こぼれだってあるはずだ。
そして正義の味方の侍が一人で大勢を相手にして刀を構え、「一つ人の何チャラカンチャラ、二つ不埒な何チャラカンチャラ、三つ醜い何チャラカンチャラ」とカッコつけている。悪い方は「何チャラ……」と口上が終わるまで待たないで、早くやっちゃえばいいのにと思う。
そして町の中で、あんなにたくさんの悪者が斬り殺されて、死体は誰が片付けているのだろう。お屋敷の中でチャンチャンバラバラして、死体があんなに転がっていて、あのお屋敷は後で『訳あり物件』として売りに出されるのだろうか……なんて、アホなことを思いながら見るのも楽しい。そして悪役が見るからに悪人ヅラをしているのもおかしい。
聞いた話だけど、切られ役の俳優さんたちは休憩時間に「オレのほうが切られ方がウマイ」など、切られ自慢をしたりしているそうだ。何だか楽しそう。
今は見られなくなったが、私が子どものころ、男の子たちはチャンバラごっこでよく遊んでいたものだ。
ベルトに竹の棒を差してそれを抜きチャンチャンバラバラ、「うー!やられた!」なんてのけぞったりして、あの時の切られかたが、いまの時代劇の切られ役と似ている。