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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

お告げ

2022.8.20 Sat

我が家の庭のアヤメが、今年は3株しか芽を出してない。どうしたのかしら?と夫に聞いたら、「もっと水辺近くに植え替えた方がいいんじゃない?」と言われた……ところで目が覚めた。時計を見たら3時半だった。
我が家はもともとアヤメなんて植えてないのに。
そして脈絡もなくアヤメの花が描かれている屏風を思い出した。あの屏風の画家の名前は何だっけ? 誰だっけ? いくら考えても出てこない。
仕方なく起き出してパソコンを立ち上げて『アヤメ屏風』と打ち込んだ。打ち込んだ瞬間、答えが表示される前に「アッ!尾形光琳だ」と思い出して、安心してベッドに入った。
そして、あれっ? 氷河で削られた海岸線って何て言ったっけ?と、変なことが頭に浮かんだ。
リアス式海岸ではなくて、何だっけ?何だっけ?と、肝心な名前が出てこない。
仕方なくまた起き出してパソコンを立ち上げ直して『氷河で削られた海岸線』と打ち込んだ。
フィヨルドと答えが出て、たくさんの写真も出てきた。
「ワールドクルーズの時。フィヨルド航行もあったじゃん!」と安心して、あのときの思い出に漂いながらベッドに潜り込んだ。
からだが冷え切っていて、くしゃみをして時計を見たら、4時20分になっていた。
未だに夫の夢を見たり、時間もわきまえず疑問に思ったことを調べようとする私って、アホなのか賢いのか。ま!アホだろう。
5時半に目が覚めて、あっち寝返りこっち寝返り、仕方ないので洗濯機を回した。いくら年寄りは朝が早いと言われても、ちょっと眠い。これでテレビを見ながらコックリコックリ船を漕いだら、年寄りそのものだ、ま!私はもう十分な年寄りに違いないけど、自分では『年寄り』という言葉が似合わないと思っているから。
しかし何でアヤメだったのだろう。アヤメの花言葉を調べてみたら『良い便り』だった。何かいいことがあるのかな?
そうか! このところ私は引きこもりがちで、鬱っぽくてなってすべてが悲観的になっていたから、「ちょっと場所を変えてみたら?」という夫の『お告げ』だったのかも。そう考えたら、ちょっと元気になった。今日は外の空気を吸ってみよう。
でも……、夢の中では意識しなかったけど、思い返せば、夢の中の夫はかなり透明に近かったような気がする。

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