内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。
オクトーバーフェスト
2022.10.16 Sun
テレビでミュンヘンの『オクトーバーフェスト』を放送していた。それで思い出した。
私たち夫婦が外国に行くときは、殆どがワールドクルーズで寄航するときだけだ。このときはなぜフランクフルトに行くことになったのか思い出せないけど、夫の嫌いな飛行機で、航空会社はルフトハンザだった。そして同行したNさんが、「ルフトハンザからファーストクラスがなくなるそうだから、一度経験しませんか?」と言う。
Nさんはビジネスクラスだったけれど、私たちは身の程知らずにも、身の程知らずだからこそ堂々とファーストクラスに乗り込んだ。居心地がよかった。
ファーストクラスは凄い。食事はお腹がすいたときに頼めばいいのだし、座席を倒すと完全にフラットになる。高級なお酒はすべて無料だけど、私たちは飲まないからちょっと損かも……って、貧乏根性丸出しかな?
飛行機はミュンヘンに到着して、フランクフルト在住のUさんが出迎えてくれた。
折しもミュンヘンでは『オクトーバーフェスト』という、ドイツ最大級のビールのお祭りの真っ最中で、民族衣装を着た男女で溢れ、お店も道路も酔っ払いでいっぱいだ。体格のいいドイツ人の飲みっぷりったらない。あれはウワバミだと、夫と日本語で悪口を言った。
ちょっと休みましょうと入ったお店も、酔っ払ったドイツ人が大声で歌っていると言うよりわめいていた。
私たちは「アルコール駄目派」だったが、Uさんが「悔しいから 我々も 歌いましょう」と、素面なのに負けずに大声で『スキヤキ』を歌った。
そんな二人を夫とNさんはニヤニヤと笑いながら見ている。
そしてわめくように歌う日本人にびっくりしたのか、ドイツ人たちが騒ぐのをやめたって、「あれは国辱ものだ」とあとで夫に笑われた。
でもね、楽しむときは楽しまなくては……が、私のモットー。
そのUさんから、先日メールが届いた。長くなるので続きはまた今度。
今回は飛行機でファーストクラスに乗った自慢と、ミュンヘンでドイツ人を黙らせるほど大声で歌った話だけ。