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内田康夫夫人であり、作家・エッセイストでもある早坂真紀の随想を不定期でお届け致します。

ミーハー

2017.3.6 Mon

初めて『内田康夫作品』TVドラマ化の話があったのは、自費出版されて間もない『死者の木霊』だった。
いま思えばテレビ朝日が、名もない作家(まだこの時は作家ではない)の、それもかなり地味な表紙の作品によくも目をつけたものだと思う(見つけて下さってありがとう!)。
あの時の竹村刑事役は、林隆三さんだった。
その時東映大泉撮影所に撮影風景を見学に行って、昼食にお蕎麦を食べた。
林さんは無口で、私は場つなぎだか何だか解らないけれど、多分リップサービスで「あっ! この蕎麦猪口、ウチのと同じだ」なんて言ってしまった。
後で考えると、安物の蕎麦猪口だったと、ちょっと恥ずかしい。リップサービスにしたって、もっと高尚な会話をすればよかったと、思い出す度に前髪パラリ。
その後は榎木孝明さんや篠田三郎さんなど、歴代の光彦さんや雪江未亡人たちの有名人にお会いするチャンスがあってルンルン……。
しかし思い返すと、生まれて初めて会った……ではなく見た有名人は、59年ほど昔にプロデューサーだった従兄に誘われてTBSに行き、スタジオで見かけた三輪明宏さんだ。当時は丸山明宏と名乗っていらっしゃったが、ほっそりとしていて細身の黒いパンツに、ヒラヒラの白いブラウスを着てらした。まるで中原淳一の絵を思わせるようにきれいだった。
そしてやはりTBSのスタジオで見かけた木村功さん。この方の男の色気に、遅ればせながら少女の域を出始めていた私は、ちょっとだけクラッとしたかもしれない。
アッ! 生まれて初めて『見た』有名人は亀井勝一郎さんだった。
短大生だった私は当時吉祥寺に住んでいて、よく井の頭公園を歩いた。そのときに白っぽい着物を着流して歩いていらっしゃるところにばったり。
「あッ! 亀井勝一郎だ!」と、あのとき私は固まっていたかもしれない。しかし白髪の亀井勝一郎さんは、私の目の前を静かに通り過ぎ、私はその姿を見送っただけだった。
優雅だったなァ! あの姿……なんて、ミーハー、ミーハー。

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